連合北海道政治学習会を開催

連合北海道は12月3日、札幌市内で政治学習会を開催した。

会の冒頭、挨拶に立った須間等会長は「『ベーシックサービス』の考え方について書かれた井手教授の書籍には、『誰かのためにからみんなのために』というフレーズがある。まさに連合が目指す社会づくりではないかと感じた。連合は働くことを軸とする安心社会を目指しているが、それは多様性を受け入れ、互いに認め合い、誰一人取り残されることのない社会である。そしてすべての働く仲間、生活者の身近な存在として、助けが必要なときに寄り添い、ともに進む、頼りになる拠りどころへと飛躍していかなければならないと、連合ビジョンに明記されている。しかし、今の日本社会は、あらゆる格差が拡大し、差別や分断へと進んでいると感じている。その解決のためにも政治は重要な役割を果たすべきであるが、政治に対する信頼は諸外国と比べ、日本は非常に低い状況である。今夏の参議院選挙では、新興政党が台頭し、ますます個人主義が蔓延したと感じる。このままでは安心して働き、暮らせる社会が遠ざかってしまう。誰もが安心して生活できる社会には、ベーシックサービスの無償化こそが必須である。本日の講演を聞いていただき、これからの日本社会はどうあるべきか、どのような政治を行うべきかを皆さんで考えていただきたい」と挨拶した。

続いて、慶應義塾大学経済学部の井手英策教授から「ベーシックサービスとは何か?財政を再生し社会を再生する」と題した講演をいただいた。

講演の中で、井手教授からは「1995年に政府が財政危機宣言を発出し、日本の財政はもう危機だ。まずいぞと言い出した。そこから始まったのはターゲットを作り出し、犯人探しと袋叩きをする政治でそれを30年間やってきた。なぜこうなったかと言えば私たちが貧乏になったからだ。自分たちの生活を守らなきゃいけなくなり、将来が不安だから仮想敵を作り出し、それが今は『日本人ファースト』という言葉で外国人に向けられている」と情勢認識について語った。

また、今夏の参議院選挙での各政党が掲げた政策についても触れながら「与党が掲げた給付は莫大なお金が必要になり財政が破綻する。野党が掲げた減税は貧しい人には月7,000円しか返らない。なのにお金がある人には2万円が返る。このようなことでは無く、誰もが必要とする医療や教育、介護などの基本的なサービスを所得制限なしで無償化しようというのが『べーシックサービス』の考え方である。ばらまきと捉える人もいるかもしれないが、消費税を後5%上げ、他の先進国と同程度の負担をすればこれは実現でき、すべての人が安心して生きていける社会を作ることができる」と強調した。

結びに井手教授は「救済されることを『屈辱』と思う社会は健全ではない。誰もが堂々と大学に行きたい人は行ける。病気になったら病院に行ける。介護が必要になれば介護サービスを使える。そういう社会を目指したい。『弱者を救済する社会』は終わらせ、『弱者を生まない、弱者を作らない社会』を作りたいと思っている。格差の是正ではない、平等にしたいのは金ではなく人間の尊厳で、誰もが誇りを持って堂々と生きていける社会を作る。経済成長を目的にしてその成長を実現するために人間を道具のように使い倒すような社会は終わらせ、人間そのものが目的なんだということをはっきり言うのが政治の責任であり、そして私たち知性ある学者の仕事だと思っている」と熱く語られた。

連合は、すべての働く仲間が、将来に希望を持って働き続け、生活者がみな安心して暮らし続けられる社会を作るため、先頭に立って次の世代に続く持続可能な社会、誰一人取り残されることのない社会を目指し取り組みを進めていく。