2025年度連合北海道「幌延深地層研究監視連絡会」開催報告

【連合北海道・政策情報No.13(2025年9月30日)】

連合北海道は2025年9月28日(日)、「2025年度 幌延深地層研究監視連絡会」(以下、監視連絡会)を開催し、監視連絡会の構成メンバー内の地協・地区連合会など12名が参加した。

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構・幌延深地層研究センターは2001年4月、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する調査研究を目的として幌延町に開設した。同センターは、1998年に策定した「深地層研究所計画(仮称)」に基づき研究目的・内容が規定され、研究期間を20年程度として設置された。

開設にあたっては、北海道・幌延町・核燃料サイクル開発機構(現・原子力研究開発機構(以下、原子力機構))の三者が、放射性廃棄物の持込使用を行わないことや、研究終了後は地上の研究施設を閉鎖し地下施設を埋め戻すこと等を約束した「幌延町における深地層の研究に関する協定書」を2000年11月に締結した。併せて、北海道は2000年10月、「北海道における特定放射性廃棄物に関する条例」を制定し「特定放射性廃棄物の持込みは慎重に対処すべきであり、受け入れ難いことを宣言する」と定め、放射性廃棄物の道内への持ち込みを拒否する意思を明らかにしている。

原子力機構は2020年1月、「令和2年度以降の幌延深地層研究計画」を策定した。その計画期間は、「20年程度」としていた研究期間を延長するものであり、2020年度以降、第3期・第4期中長期目標期間の9年間(2028年まで)、研究に取り組むこととしている。

このような流れをもとに、連合北海道は2001年から監視連絡会を開始し、視察等を通じた監視活動をはじめ、国や道政に対する政策要求や、北海道と幌延町が三者協定第14条に基づき設置している「幌延深地層研究 確認会議」(以下、確認会議)の確認等の活動を行ってきた。

本年の監視連絡会では、原子力機構(JAEA)より、①同研究センターの設立の経緯・沿革をはじめ、②核燃料サイクルと再処理で発生した高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の貯蔵保管状況、③人工バリアと天然バリアによる高レベル放射性廃棄物の地層処分、④原子力発電環境整備機構(NUMO)が実施する処分事業、⑤地層処分技術の研究開発・調査研究の具体例及び研究成果の公表・普及など、幌延深地層研究計画に係る概要説明があった。その後、幌延深地層研究センターで行っている高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究内容を紹介する施設「ゆめ地創館」地上施設および西立坑(地下350m調査坑道)を2班に分かれて視察した。

地下350m調査坑道 視察の様子
上:原子力機構から説明を受ける監視連絡会の参加
下:幌延地域の泥岩地層が露出した「幌延の窓」

350mの調査坑道への視察にあたり、監視連絡会の参加者全員が作業着に着替え、長靴やヘルメット、軍手、ペンライト、落下防止の携帯ケースなどを身につけ、人キブル(工事用エレベーター)に乗って地下350m調査坑道まで移動し、坑道内のポイントごとに研究センター側から説明を受けた。坑道内では、メタンガス測定器や地上で坑道内を監視するための設置カメラ、坑道内の温度計、掘削・ズリ出し・打設の様子を示したパネル展示を確認したほか、人口バリア性能確認試験の概要や幌延地域の珪藻質泥岩等による地層に触れることができる「幌延の窓」などの紹介もあった。参加者は、地上より湿度・温度も高く、トイレもないという過酷な労働環境でもある地下施設の現場を肌で感じることができた。

上:地上施設「ゆめ地創館」での視察の様子
下:ベントナイトの吸水力体験コーナー

地上施設見学先の「ゆめ地創館」では、原子力機構の星野課長より、世界の地下研究施設や地層処分事業における諸外国の状況について説明を受けた。また、実物大の人工バリア(ガラス固化体の代わりにヒーターを内蔵した模擬オーバーパックと緩衝材)を見学したほか、放射性物質を吸着し、その移動を遅らせる性質も持ち人工バリアとして用いることで地下水や放射性物質の移動を抑制することができる性質を持つ、ベントナイト(天然に産出される粘土)に触れ、実際にベントナイトの吸水力を体験するなど、学びを深めることができた。

視察後は、「ゆめ地創館」内の会議室において、2025年度連合北海道「幌延深地層研究監視連絡会」を開催した。

監視連絡会の主催者挨拶に立つ和田事務局長

開会に先立ち、本連絡会の代表である和田事務局長が「1998年に策定した深地層研究所計画では、研究期間を『20年程度』として設置していたものの、2020年度以降、第3期・第4期中長期目標期間のもと2028年まで延長して研究に取り組むこととなった。特定放射性廃棄物の持込みは慎重に対処すべきであり、受け入れ難いこととする『北海道における特定放射性廃棄物に関する条例』や、放射性廃棄物の持込使用を行わないこと・研究終了後は地上の研究施設を閉鎖し地下施設を埋め戻すこと等を約束した『幌延町における深地層の研究に関する協定書』(北海道・幌延町・原子力機構の三者協定)をきちんと遵守していただきたい。また、研究を踏まえて、寿都・神恵内では概要調査に向けた動きも進んでいるといった状況にある。本日は、監視連絡会構成メンバーとの意見交換を踏まえて、連合北海道として今後の幌延深地層研究計画に関する取り組みを進めていきたい」と挨拶した。

監視連絡会 全体の様子

続いて、永田総合政策局長から2024年度活動経過報告と2025年度の取り組みについて報告があった。2025年度の取り組み状況については、すでに2025年4月に決定した本連絡会の役員体制を確認した上で、国や道に対する「要求と提言」のなかで幌延深地層センターに関わる要求事項及び中央省庁との意見交換内容について説明したほか、今年4月23日・5月23日・8月26日に開催した「幌延深地層研究の確認会議」(事務局:北海道経済部資源エネルギー課)において、道庁や幌延町をはじめ、有識者、幌延深地層研究センターがやりとりした議事内容についても説明した。

最後に、連合北海道は「幌延町における深地層の研究に関する協定書」と「北海道における特定放射性廃棄物に関する条例」の遵守を基本に、2028年度の確実な研究終了に向けた要請行動や監視連絡会などの監視活動を強化することを確認し、本連絡会を終了した。

以上