平成24年度北海道最低賃金改正に関する事務局長談話

連合北海道事務局長  出村 良平

北海道地方最低賃金審議会は、8月21日午後、平成24年北海道の最低賃金を現行の705円から14円引き上げ、719円に改正し、10月18日から発効することを結審した。
地域最低賃金は、北海道の低賃金構造を改善し、「働く貧困層=ワーキングプア」の解消のためのセイフティーネットの一つとして最も重要なものである。

本年の審議に当たって労働者側は、平成20年の改正最低賃金法の施行により、「生活保護施策との整合性に配慮する」という3項の規定が設けられ、また、同年の答申により、「生活保護とのかい離額を5年以内で解消する」と合意した期間の最終年に当たることから、本年度で生活保護費とのかい離30円を解消し、加えて働く者が経済的に自立可能な水準への改定を強く求め、雇用戦略対話合意の800円、1,000円への引き上げに向けた道筋を付けることを強調した。
これに対し使用者側は、雇用戦略対話合意の前提条件である「名目3%、実質2%を上回る経済成長」に対し、昨年度のGDP成長率がマイナスであることや、企業の生産性の減少、個別企業の支払い能力を繰り返し強調し、また、生活保護についても問題を抱える制度であると主張した。
労働側委員は、「労働の対価としての賃金が生活保護費以下であってはならないこと」「非正規労働者の3分の1が主たる生計者であることを重視すること」「相対的貧困率が20%弱にも及んでおり、貧困格差が教育格差に繋がっていること」などから、最低賃金の大幅引き上げに向けたプロセス、条件整備をどのように作っていくのか、最低賃金のあるべき水準を念頭に議論を尽くし、本年度でのかい離解消に最大限努めるよう主張した。

しかし、本年度は平成23年度生活保護水準の見直しに伴い、かい離額が17円から30円に拡がったことや、「中賃目安」の表現の捉え方の相違などから、金額審議と解消年数を巡って、審議会議論は例年以上に激しいやり取りとなり、発効日も昨年より大幅に遅れる状況となった。
労使譲らず激しい審議の末に、公益委員として「中賃目安などを考慮することも必要であり、14円の引き上げ」が提案された。労働側は、引き上げに伴う影響率が全労働者で12.9%(昨年10.1%)、パートに至っては33.5%(昨年26.7%)と労働者に与える影響が極めて大きいことから、厳しい判断を迫られたが、最終的に採決で公益と労働側委員の賛成により結審された。

今年は、例年取り組んでいる審議会会長宛のFAX要請(400超団体)、労働局前での昼休み集会に加え、審議会会長と北海道経営者協会への要請行動、全地協テープ街宣行動、札幌駅前「早朝街宣行動」などを展開し、道民世論の喚起に向けた取り組みに全力をあげてきた。
今回の改定額は、労働側が主張してきた生活保護とのかい離解消という要求からして、決して満足のできる改定額とは言えないが、大阪と同様14円の最高引き上げ額であり、また、引き上げ率1.99%は全国一となった。加えて引き上げに伴う影響率が極めて大きいことなどを考慮すると一定評価できるものと言える。
地域別最低賃金の闘いは一定収束を図ることとするが、引き続く、特定(産業別)最低賃金の引き上げと、今年度、残された生活保護とのかい離を、次年度での解消をめざすとともに、改正された最低賃金の履行確保を求めていく。
この取り組みに結集された産別・単組、地協・地区連合、関係各位のご協力に感謝し、引き続き、最低賃金の大幅引き上げに向けて、今後も全力を挙げることとする。

以上