日本のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加に関する談話

連合北海道 事務局長 村田  仁

菅首相は開会中の第176国会における所信表明演説のなかで、TPPへの参加を検討する旨を表明し、日本が議長国として近く開催されるAPECにおいて、正式に表明する意向と伝えられている。
TPP参加をめざす菅首相は、自由貿易体制のもとで国内産業の輸出競争力を強化して雇用の空洞化を防ぎ、「強い経済」をめざす考えと思われる。一方、安い農産物の輸入がいま以上に増えれば、国内農業は甚大な打撃を受けるおそれがあるほか、第一次産業にとどまらず、情報、金融、郵政など様々な分野での市場開放は必至とされており、政府内でも賛否が分かれている。とくに北海道における農業・第一次産業は地域の基幹産業であり、道の試算ではTPP参加により、道内の主要農畜産品7品目と関連産業の総生産額が年間2兆1254億円減少するとされ、地域の雇用や経済・社会を支える基盤が大きく損なわれることが懸念されている。

戸別所得補償制度をはじめとする民主党の農業政策は、自由貿易体制のもとでも国内農業の持続的生産を可能にし、国際競争に耐えうる「強い農業」と自給率向上をめざすものであって、TPP参加に対応する国内対策として機能することを、与党・民主党はしっかり説明しなければ、国民合意を得ることは難しい。
しかし、「日本のGDPにおける第一次産業の割合は1.5%」などと、国内の第一次産業の役割・機能を過小評価するような閣僚の認識は、民主党の農業政策と矛盾しているとの疑念を抱かせるものである。

国土や環境・景観の保全、食の安心・安全を確保する視点から、農村社会を維持し国内農業を振興する農業政策は、経済政策と同様、国民生活にかかわる重要な政策の柱であり、「国民の生活が第一。」とする民主党政策の真価が問われるテーマである。

連合北海道はこれまで、地域に暮らす生産者・勤労道民の視点から農業・農村を守る必要性を、地域医療や福祉・教育といった社会政策の充実とあわせて訴えてきた。TPP参加に対する評価を下すためには、地域の経済・社会・雇用への影響、食料の安全保障における国内農業の役割について、政府の統一的な考え方が明確にされることが前提である。

以 上