2009年北海道最低賃金に関する取り組み方針(案)
2009.2.25 第1回対策委員会
1.最低賃金法改正と連合北海道の基本的考え方
(1) 労働基準法第2条は、「労働条件の決定は労使が対等な立場で行うもの」と定めている。しかし、最低賃金の影響を直接的に受ける多くの未組織労働者やパートタイム労働者は、労働条件決定にほとんど関与することができない状態にある。従って、労働組合自らが未組織労働者を含む全ての労働者の労働条件決定への関与に向けた取り組みを強力に推進することが重要である。
今日、非正規労働者(37.8%)の増大とその多くが年収200万円以下となっている。派遣切り、日雇い派遣など雇用形態の多様化の名のもとに進められた労働の非正規化は大きな問題である。このように雇用環境の著しい変化の中で、最低賃金制度が果たす役割はますます大きくなっている。
(2) 最低賃金法の一部を改正する法律が2007年の第168回臨時国会で成立し7月1日より施行された。主な内容は(1)地域別最低賃金の決定基準は、地域における労働者の生計費および賃金並びに通常の事業の賃金支払能力とし、生活保護との整合性も考慮するとともに罰金額を50万円以下に引き上げ、(2)産業別最低賃金を改め特定最低賃金とし、労使の申し出にもとづく最低賃金の設定に最低賃金法の罰則は適用せずに民事効とする、(3)旧第11条による労働協約拡張方式の地域的最低賃金は廃止する、(4)派遣労働者の最低賃金は、派遣先の最低賃金を適用する、(5)最低賃金の表示単位を時間額に一本化する、といった内容である。
(3) また、成長力底上げ戦略推進円卓会議においては、中小企業の生産性向上と最低賃金の抜本的な引き上げに向けた議論が展開される等、最低賃金の水準改善への機運が高まり、14円(2007年度)、16円(2008年度)の引き上げにつながった。
労働組合の普遍的な活動の重要性を改めて強く認識し、これまで積み上げてきた地道な活動をさらに発展させつつ、最低賃金制度の継承・発展に向け、春季生活闘争とその後の最低賃金の取り組みとの連動を強めながら、最低賃金運動の進展のため、全ての組織が不退転の決意で取り組みを推進しなければならない。
(4) 今後、中央最低賃金審議会において改正最低賃金法を踏まえた目安制度のあり方に関する審議(「目安制度のあり方に関する全員協議会」)が行われることになっている。この目安制度のあり方に関する審議に対し、連合は「最低賃金制度に関する中期取り組み方針」を踏まえて審議に臨むこととしている。2009年度の地域別最低賃金の金額改正にあたっては、2008年に見直した連合リビングウェイジをベースに「最低生計費を担保する賃金」として、より絶対水準を重視し取り組むこととする。
2.2009春季生活闘争における最低賃金の課題…(2009北海道春季生活闘争方針抜粋)
すべての労働者が、最低限の生活ができる賃金水準を実現すべく、社会的な水準規制を行う。中期的な目標としては、時給1,000円を目指すこととし、当面は「リビングウェイジ」に基づく870円を到達目標とする。
(1) 企業内最低賃金の取り組み
@ 全従業員対象の企業内最低賃金協定の締結を連合リビングウェイジの水準を目標に行 う。
A 法定最低賃金(産別最賃)の引き上げに結びつく企業内最低賃金協定を締結する。その 水準は、連合リビングウェイジの水準を上回るものとし、その産業にふさわしい水準と する。
B ハイタク産業労使の協議による、企業内最賃の締結を促進する。
(2) 法定最低賃金の引き上げ
@ 法定最低賃金は、生計費を重視し最低限の生活が可能な最低賃金水準の実現に全力を あげる。具体的には、札幌市の生活保護を上回る水準を目指し、最低賃金対策委員会 で具体化する。
A H21年度最低賃金水準の引き上げのため、学習会や街頭宣伝を活発化させ、社会的キャン ペーンを展開して道民世論の形成をはかる。
3. 地域別最低賃金の取り組み
(1) 金額改定要求について
@ 地域別最低賃金の改定にあたっては、北海道内の「一般労働者の賃金水準」と比較し、併せて生計費実態を踏まえ、「セーフティネットとしての実効性の高い水準=経済的に自立できる水準」を目指し、改定要求とする。
A 具体的には、2008年に見直した連合リビングウェイジを参考とした単身労働者の必要最低生計費、高卒初任賃金の時間換算額、一般労働者の賃金水準等に対する適正な水準(50%程度)の確保に努めるとともに、最低賃金がもたらす影響との関係についても考慮する。
B 最低賃金と各種労働・経済指標における全国的順位との整合性の確保に努める。
(2) 要求(改定目標)の提出時期について
地域別最低賃金の改定等に関わる要請は3月上旬までに労働局、経営者団体等に行う。
(3) 北海道地方最低賃金審議会における取り組み
@ 労働者側委員と最低賃金対策委員会が十分に連携をはかりつつ審議会対応を強化し、地方 最低賃金審議会の自主性を発揮する中で、その水準の引き上げをはかる。
A 審議日程の設定にあたっては、10月1日発効となる最終期限ぎりぎりまでの審議日程を必ず確 保し、全体の相場を形成し波及に努める。
B 上積みが困難と判断した場合は、決定を可能な限り留保し、後半日程で審議する地方への影 響を最小限にとどめる。
4.特定(産業別)最低賃金改正の取り組み
(1)申出の取り組み
@ 該当産別は、協約ケースによる特定(産業別)最低賃金の申出拡大をめざすことを基本とし、公 正競争ケースによる申出であっても、可能な限り合意労働者に含まれる「企業内最低賃金協定」 による合意者(分子)のウエイトを高めるよう、企業内最低賃金の水準改善とその協定締結に努め る。
A 2008年に日本標準産業分類が改定され、2009年の特定(産業別)最低賃金はこの括り に基づき設定されることになる。新しい分類への組み換えについては北海道労働局と協議 のうえ、申出に支障をきたさないよう万全を期すこととする。
B 産業別最低賃金の申出に関係する各組合は、企業内の最低賃金協定の取り組み過程において、使用者に対して申出の取り組みについての通知を行うとともに、法定最低賃金の意義と労使の社会的責務について話し合い、理解を求める。さらに、業界団体との意思疎通をはかり合意形成に努める。
C 金額改正ならびに新設に係る意向表明については、遅くとも3月末までに行う。要求金額の水準については、従来通り、「地域最賃の20%アップの水準を中期的に実現する」を目標とする。
D 適用労働者数が1,000人を下回る場合、あるいは、適用労働者数に大きな変化や産業分類上の扱い等、精査が必要な案件については、北海道労働局と事務手続上の協議を十分に行うとともに、事前に産別本部・連合本部と協議する。
(2) 審議の取り組み
@ 審議にあたっては、当該専門部会労働者側委員と当該産別との連携強化をはかる。
A 金額改定や新設にかかわる本申請については、「6月末目途」を基本とし、遅くとも7月末までに完了する。申出書の記載については、金額のみに限らず幅広い審議が可能となるような記載にする。
B 金額改定については、「企業内最低賃金に準拠した水準」とともに、「地域最賃の20%アップの水準を中期的に実現する」をめざし、可能な限り引き上げをはかる。発効日については、「年内発効」をさらに前倒しした10〜11月発効をめざす。
(3)新設の取り組みについて
新設については、従来から取り組んでいるハイタクをはじめ、特にサービス産業等の第三次産業分野での拡充を念頭に、関連産別と連合北海道が連携し、具体的着手の検討とその取り組みを進める。なお、単年度の計画にこだわらず、最低賃金部会での検討を見据えつつ、中期的な計画を立てながら前進をめざす。
5.世論形成の取り組み
具体的には「取り組み方針 その1」で提起するが、当面以下を柱とする。
@ 道議会、市町村議会(6月議会)での意見書・決議に取り組む。
A 地協単位の最低賃金学習会を開催。
B 山場におけるFAX行動や集会の開催。
C その他
以 上