2009.04.14
       地域医療の崩壊を食い止めるのは北海道の責務


 連合北海道地域医療を守る対策委員会は4月11日、札幌市でシンポジウム「地域医療の崩壊を食い止めるために」を開催した。全道各地から産別、地協、退職者連合、一般参加者250名が参加し、道内の医療提供体制の現状や問題点、地域医療連携に関する砂川市立病院の取り組み報告を受けて、住民本位の安心安全、信頼の地域医療にむけ、地域でさらに取り組みを強化していくことを確認しあった。
地域医療シンポジウム 冒頭、連合北海道の柳会長は、千葉県銚子市での自治体病院の休止問題をめぐって市民からのリコール請求によって市長が失職した事態にふれ、「地域医療は地域・住民の意思表示により『こと』を動かせるほど重要な課題である」とし、「私たちが地域の課題に関心を持ち、行動を起こさなければ事態は変わらない。地域の24時間の安心・安全な医療体制の『あるべき姿』を、まずは自治体で、次に広域連携で、そして北海道で、それぞれの役割について地協・地区連合の立場、段階での議論をお願いしたい」と強調した。また、「道民の安心・安全は1市町村で賄えない。北海道の責任でプランニングやサポートが必要」と指摘した。

■患者への責任を北海道として果たすべき
 講演では「北海道の医療機能の現状」と題して、北海道病院協会の徳田禎久理事長から、独自にまとめた道内各地の医師・看護師の配置状況や診療科の分布を基に、北海道の医療提供体制の問題点を指摘した。
 まず、北海道全体をみれば病院数も病床数も多いが、広域、医育大学の環境変化、厳しい診療報酬改定、自治体財政の危機により医療提供に大きな地域格差があると共に地域の重要な位置付けにある自治体病院等の経営が危機にあると指摘。特に「大学病院が独立行政法人化になったことにより、高度医療を担う病院から一般病院と同様な経営重視の視点となり勤務医の労働強化につながった。地域医療を確保するためにも、どのような診療科目が必要なのか、本来であれば北海道が分析し、それに基づき医療計画を立てなければならないにも拘わらず、我々(医療提供者)が分析を行っている。医師不足が言われているが原因には行政の怠慢がある。地域医療に手を打ってきたのか。道内の患者への責任を道としても果たすべき。また2〜3年前のマスコミによる医療バッシングの影響も少なくない。砂川市立病院が、地域医療を真剣に考え取り組んできたように、時間はかかるが実現する」と話した。

■自己完結型医療から地域完結型医療への転換医療シンポジウムのパネリスト達
 つづいて、「地域医療の確保と医療連携」と題して全国自治体病院協議会北海道支部事務局長の小俣憲治氏(砂川市立病院事務長)は、「全国的に医師不足の中、2003年度から2008年度の間で医師が19人が増えた。これは@受け入れ体制の強化、A砂川市として環境づくりに先行投資をしてきた結果である。受診者の64%が市外からであり地域の為の病院として位置づけ取り組みを進めてきた。何故今医療連携が必要なのかを考え、『自己完結型医療』から『地域医療完結型』への転換をはかってきた成果である」と、地域医療連携に関する砂川市立病院の特徴的な取り組みを話した。小俣氏は最後に地域連携を通じて学んだことと前置きし、「動かすのは人、人と人とのつながりで連携は生まれ、物事は動いていく」と強調した。

■空知、十勝の取り組み報告
 連合北海道は今日まで各地域でチラシ配布や署名活動に取り組んできたが、シンポジウムでは空知地協と十勝地協から報告をいただいた。
 空知地協の運上事務局長は、「地域住民アンケートの実施などによって、安心・信頼の地域医療を求める住民の思いが明らかになった。高橋道政は財政再建を優先し、地域切り捨ての道政運営を行おうとしている。一方的な議論にならないよう、地域に根ざした議論をすすめ、本当の意味での地域医療を確立できるよう引き続き活動していきたい」、また十勝管内の「自治体病院等広域化・連携検討会議」の構成メンバーとなった十勝地協の岡村副会長からは、今年1月に開催された1回目の会合の内容が報告され、「医療は身近な行政だ。住民の声が行政を動かす。住民の声を大事にして取り組んでいきたい」と、それぞれ今後の決意を述べた。

■地域住民の思いに応えた事業計画を
 その後、徳田禎久氏、小俣憲治氏に北海道医療等関連労働組合連絡協議会の渡部基久議長を加え、鼎談(ていだん)が行われた。前段の講演内容の豊富化や会場からの質問などを受け、@地域医療と病院経営A医師確保についてB医療の自己完結型・ネットワーク型等を中心に話し合われ、各氏とも地域住民が何を求めているのかを考え、事業計画を策定するべきであり、そのためには行政の大きな関わりが必要であると指摘した。

 以 上