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TPP問題 学習会 演題:「TPP問題と労働」
講師:弁護士 杉島 幸生 氏

と き/2014年3月26日(水) 18:00〜
ところ/ホテルポールスター札幌 2階 「メヌエット」 


 みなさんこんばんは。大阪から来ました弁護士の杉島です。TPPと労働ということで話をしてほしいということでしたが、今日はTPPの全体像についてまずお話をさせていただいた後、なぜTPPが出てきたのか、どういう背景のもとTPPが今議論されているのか、ということについてお話をさせていただいた後、労働の問題についてお話をさせていただきたいと思っております。と言いますのは、TPPと労働、労働だけに特化しているとなかなか分かりにくい。全体像の中で労働がどう動いていくのか。あるいは皆さん方労働者を取り巻く状況がどう変化していくのか、それを理解していないと全体像が見えてこないと思うからです。もうすでに色々と勉強をされている皆さん方にとっては余計な話、分かった話なのかもしれませんが、しばらくお付き合いをいただけたらと思っております。

<TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)とは?>
 まず、TPPとは何かということですが、これは、Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement 環太平洋戦略的経済連携協定というもので、その文字の一部を取って一般的にTPPと呼ばれているということです。これは実は、今初めて作る条約ということではなく、2006年にチリ、ブルネイ、シンガポール、ニュージーランドという環太平洋の四カ国が締結をした貿易協定で、これをTPPと言います。これに対してその他の国々が入っていく、その場合のバージョンアップをする、その議論を今されているということです。P4のPはPacific太平洋という意味だったそうですが、このP4協定が2006年に発効し、それのバージョンアップ部分が議論をされているということです。農業だけの問題ではないと先ほど主催者の方からのお話の中にもありましたが、それはP4協定の章立てを見ていただいたら分かるかと思います。現行のP4協定でも20章と2つの付属文書からできております。このうち農産物の輸入にかかわる分野は第3章、4章、5章6章だけです。関税の問題はこの部分で議論がされている。日本は関税とは全く違う問題点が話されているということになります。例えば、第7章の「衛生植物検疫措置」これは何か。食料を輸入するとき、安全性はどうなるか、関税はどうするか、添加物について、農薬について、こういったことを定めた文章立てです。これについては国際基準のあるものはそれに従う、原則国際基準以上のものにしてはいけない。それ以上の厳しい規制にしようと思うと、それは本当に危険だということをその国が科学的に証明する、それ以外については輸入を禁止してはいけないということが定めてあります。例えば遺伝子組み換え食品がどうなのか。例えば成長ホルモンを使用した牛肉は安全なのかということについて、これが適用され、規制する側が科学的証明をされない限り輸入は禁止できない、ということがこの章立てで書かれています。その次の貿易の技術的障害、これも同じようなもので、工業製品も入れます。それらの安全基準はどうしますかという話。あるいは表示をどうするか。こういったことが議論されています。これも同じように国際基準があるのならそれに従ってください。それに違反したら駄目ですよ。違うことをしたければそれが本当に必要だということを規制する側が証明してください、ということが書いてあるわけです。競争政策とは何か。それぞれの国に、日本のも独占禁止法と言われています。これは独占を禁止するのではなく、自由貿易、自由構想を確保すべき中身ですが、それを制定してください、その時の基準についても明記しなければいけない。知的財産については知的財産の保護についても日々強化していきます。ここでジェネリック薬品の問題が出てきます。医薬品については今20年間が特許期間ということで、それが過ぎればコピー薬を作って販売してもいい。ところが、それは特許権者を侵害するのでそれは20年以上にしようといったことがここで議論されています。もう一つ第11章「政府調達」。ここではどんな議論がされているのか。これは公共事業、学校を造る、橋を造る、道路を造るこういったものです。公共事業が物を買う、あるいは自治体が物を買う。ある一定の価格の物については、公共調達はすべて外国に公開入札をしなさいといったことが義務付けられることになります。P4協定の基準で言うと代替建築で7億円ちょっとです。物を買うで700万円ちょっとで、それ以上については全部公開入札しなさいということが書いてあります。その時に、公開入札にあたって海外の企業と日本の企業とを差別的に取り扱ってはいけないということが書いてあります。それだけではありません。公開入札の条件に、たとえば建築であればものを建てれるかとか、それ以外の条件を付けたらいけない、契約履行遂行に必要な物を持っているかどうか、これは審査してもいいけれども、それ以外の条件を付けることは政府調達の調印に違反しますということが書かれています。「サービス貿易」これは先ほどちょっと司会者の方がお話されていましたけれども、これは、サービス関連事業を相手加盟国内が日本国内で自由に行き来できるようにしてください。それを邪魔してはいけない。サービス貿易をするにあたって、特定の経営形態、株式会社にしなければいけないなどということを定めてはいけません、事業所を国内に置きなさいと定めてはいけません、日本国内に何日以上滞在しなければいけないというようなことを定めてはいけません、などどいうようなことを細かく規定しています。13章についてはサービス貿易に従事する人間については、出入りを自由にする。その障壁については可能な限り外すこと、ということが定められており、事前に規則を関係国全部に通知しなさいということが書いてあります。こういった自由化のためのルールが1章から定めてあるわけですが、それに反したときの紛争解決という制度もあります。これはまたあとでもやりますけれども、こういったことが定められているということですね。こんなふうに非常に広範な分野で事細かに自由化についてのルールが定めてあります。これがTPPです。しかもこの自由化のルールはどういった分野に適応するのか、ということですが、これについては各分野でネガティブ方式をとっています。どういうことかというと、適応しないということだけリスト化する。これを加盟国全員が合意すれば除外する。もし、リストに載っていなければ将来除外するということはできないということです。事前にネガティブリストを作成し提出しなければならないということです。自由化の程度が高い。自国民と同様な扱いをしなさい。規制については最小限でなければならない。それは、公正でなければならないということが各分野で定めてあります。これが現行のP4協定の中身です。これについて2009年からアメリカをはじめとする各国が加盟を宣言しました。2012年にカナダ、メキシコが、2013年に日本が正式に加盟を表明しました。今お話をしたP4協定のバージョンアップ協定と、それにプラスα投資家保護の協定、金融サービスの章を加えようということが、今議論されていることです。この投資家保護の章の中にISDSあるいはISD条項が含まれています。これは、海外に進出した投資家が自分の利益を侵害された時に相手国を損害賠償請求することができるという制度が作られることが決まっています。これが今TPPの中で議論をされていることをザクッとお話させてもらったわけですが、これがクロスバージョンというかミックスしてくると、私たち働く者の中にどういう影響が出てくるのか、こういうことを議論をしなければいけないということです。政府は労働の部分で議論はされていません、影響がない、と言っているのは何かというと、労働の章の分野で議論をされていることだけ言っています。労働の章で日本の労働基準法を変えろとか、規制緩和をしなさいとかというような議論はないので大丈夫というのが日本政府の公式見解ですが、労働者への影響はそれだけではありません。政府調達、サービス貿易、一時入国など影響は与えられないのか、そんなことはありませんね。投資家保護、これは労働者に影響を与えないのか、そんなわけはありませんが、これは労働者とは関係がないので労働分野は大丈夫と言っています。これが今の政府の公式見解になるわけです。ですから、私たちは労働の分野だけではなく、その他の分野で何が起こるのか、それが起こった時、労働者にどんな影響が出てくるのか、といったことを常に広く見ていかなければいけないということです。

<GATT、WTO、そしてTPP(FTA)へ>
 TPPがどんなものかについてざっとお話をしましたが、歴史的な背景についてですが、簡単に言うと自由貿易をどう推進していくのか、という流れの中でTPPが出てきているということです。最初に自由貿易、国際協定として定めたのは1947年です。GATT・関税及び貿易に関する一般協定です。ある程度の年齢の方には聞き覚えのある言葉だと思いますが、これは端的には社会主義を囲んで自由主義を確保しましょう、そのために自由主義貿易を促進させていきましょうという貿易ルールです。ただ、これについては後進国といわれる国々が加盟しやすいように、非常に緩やかな規制になっていました。後進国条項というのがあって、一定の経済力に達していない国はこのルールは適用しませんというようなことが事細かに決められていて、日本も60年代まではそのルールが適用されて、貿易の自由化については強制されていませんでした。70年代になってオレンジ貿易自由化だとか、レモンの自由化だとかいう議論が出てきました。その時自由化されるということで大騒ぎになっていたと思いますが、この時はオレンジ1つのことでしたが、TPPは全部についてやっていこうということです。このGATTについては、ソ連が崩壊し冷戦が崩壊して社会主義包囲という必要性はなくなった。それでGATTをバージョンアップしようということで出てきたのがWTO・世界貿易機関です。これについては世界一挙にやってしまおうということで、最初は新興国も自由貿易をすれば自分の国も豊かになるだろうと賛成して世界体制としてできたわけですが、3年、4年経つとすぐにこれは自分たちの国にとって利益ではないと思い出して会議がうまく回らないようになって、今WTOでは新しいことはほとんど決めることができなくなっています。それはWTOで先進国が民主的な手続きということを言いたいために、新しいことを決めるには全会一致でなければいけないというルールを作りました。そうなると一部の新興国は不利になりそうなると物事を決めることができなくなる。それで、新しいことはほとんど決めることができなくなっています。そういう反省の中で、世界一度に決めるのは無理なので、個別に、あるいは数か国で、小さなFTA・自由貿易協定を作ってそれを積み上げていこうということです。それを世界中にどんどん積み上げていくと、いずれネットワークのようにつながって、世界中に自由貿易の体制ができるだろうと方針を切り替えたのが1999年以降で、FTAという2カ国から数カ国間の貿易協定が雨後の筍のようにどんどん出てきたというのが今の状況です。日本もそれに乗り、発効済みの協定が13、交渉中が8あります。アメリカは発効済みが28で交渉中はゼロということになります。その中の一つ、12カ国間でやろうというのがTPPです。

<自由貿易協定はなんのために必要とされているのか>
 これは何のために必要とされているのかということについてですが、「WTO法・第2版」という本の中に、自由貿易協定がなぜ必要なのか、ということが書かれています。世界中になぜ自由貿易の協定を作る必要があるのか、こういうことを言っています。「自由貿易というのは各国の経済を発展させる。それはリカードの比較生産費説より明らかだ。しかし、国内では保護主義が優位になりやすい。それはなぜか。既得権益者が日本国内にはたくさんいる。だから、日本の政治に任せていたら自由貿易が進まない。そこで必要なのが、国際的取り決めによって国家主権を制約し、自由化プロセスを促進する仕組みを整えること。」これがWTOである、あるいはTPPであるということです。簡単に言うと、自由貿易をしたら幸せになるのに邪魔をする人がいるから、邪魔ができないよう国家主権を縛って、民意を反映しないよう無理やり作り上げていきましょうということを丁寧にお話しているわけです。これはレジュメに書いてあることがそのまま本に書かれていますので興味のある方はお読みいただけるといいのですが、メリットはありません。こういう思想背景のもとにTPPが出てきている。リカードの比較生産費説ということですが、200年ほど前の方が言っていることですが、「それぞれの国が得意分野の物を作って特化したら幸せになる」日本は自動車が得意なら自動車だけを作っていたらいい。お米も乳製品も作らなくてもいい。自動車を売ってニュージーランドから牛肉やミルクを買ったらいい。そうするとニュージーランドも日本も幸せになる。そういう理論です。私にはよく理解ができなかったのですが、これを数学的、経済学的に数式で証明した人です。これを分からない人がいるから、国内政治を押さえつけて自由貿易を進めるということを京大の先生がおっしゃっているわけです。ただ、比較生産費説、私は経済学を勉強したことがないので分かりませんが、本当なのだろうか、数式だけを読んでも私の頭では理解ができないのですが、これについては反対をする経済学のグループがいます。例えばケインズですが、彼はリカードの比較生産費説を否定するところから始まっています。最近はあまり評判がよくないかもしれませんけれども、ケインズが、アメリカでも日本でも一世を風靡してその政策もとりました。それはケインズ政策が正しいと思ったからそうしたのですが、私にはどちらが正しいのかわかりませんけれども、決して100%正しいと証明がされたわけではない。リカードの比較生産費説に基づいて今押し進められようとしているのがTPPです。1700年代の話をしても古すぎますので、今の経済学者はどんなことを言っているのか調べてみました。リカードの脈絡を受け継いでいる経済学者に「資本主義と自由」という本を書いたフリードマンという人がいます。皆さん方も名前を聞いたことがあるかと思います。彼はその本の中で<政府が行うべきでない14の政策>というのを出しているそうです。なぜそうなのかということについては私に聞かないでほしいのですが、労働者に関係するものとして、その中の*物価や賃金に対する規制・統制 *法定の最低賃金や上限価格の設定 *産業や銀行に対する詳細な規則、これを真面目にやろうとした政治家がおりました。夏の参議院選挙の直前、これに基づいて最賃などやめたらいいと言った政治家がおりました。それは私が住んでいる大阪の維新の会の橋下さんがそれを言ってすぐに撤回しましたが、彼は、最賃があるから失業が起こる。何百円で働いたらいい。そうすると本来失業はなくなると、本当に大阪で言ったのです。これはフリードマンのこういった立場に立っているからです。ちなみにフリードマンの系列の新自由主義者という人は、失業者はこの世の中にはいない。巷にあふれているのは自分で働かない人。自発的失業者というのはこの世にはいない。仕事がほしかったら100円でも200円でも働いたらいい。働き口はいくらでもある。それが嫌だから働かないのだということを堂々と書いています。これが今、新自由主義者の教祖といわれるフリードマンが著作の中で言っていることです。こういった考え方の下に自由貿易を進めようとして作られている一つの手段がTPPです。こういうことを皆さん方にぜひぜひ知っていただきたいと思います。それで、実際にP4協定を見ていただきたいのですが、その第1章に(目的)があります。「締約国間の貿易の拡大・多様性を進めること。障壁を除去し物品及びサービスの貿易を円滑化すること、公平な競争条件を促進すること、投資機会を拡大すること、知的財産の適切かつ効果的な保護と執行を提供すること、貿易紛争を防止し解決する効果的なメカニズムを創設することを目的とする」これがTPPの目的としてP4協定の第1章1条に書いてあります。そこには人権、環境、労働、各国の文化、伝統等との調和をどう図っていくのかについては書かれていません。普通、何とかと調和をとりつつ自由貿易の発展を…といったことが書いてありますが、P4協定には書かれていません。自由貿易・投資機会を拡大するためにルールを作る。紛争解決のため効果的なメカニズムを作る。これがP4、TPPの目的だということが第1章に書いてあります。では、効果的なメカニズムとは何かなのですが、そこにはいくつかの規定があります。例えば、TPPで議論をされている効果的なメカニズムはどういうことが言われているか。P4協定になかった投資の章で、投資家がお金を投資して工場を作ったり、株を買ったりしやすくする。そのために、投資家が加盟国内で活動するにあたって今ある規制は仕方がないが、今ある規制をより厳しくすることはいけませんということが書かれています。より厳しくしたかったら、どの分野を厳しくするかもしれませんということをリストアップする。リストにないことは厳しくすることはできません、ということが書かれています。これはラチェット条項と言うそうです。これについては、韓米FTA条項にあります。ラチェットというのは歯車で、前には回るけれども絶対に後ろには回らないという歯車を言うそうです。これも恐らくTPPの議論の中で、韓米FTA、北米自由貿易協定NAFTAに含まれている条項がTPPに入ってこないはずがない。この条項があれば日本はネガティブリストに書いて、相手から同意を得ない限りはより厳しい制約はできません。これはありとあらゆる投資家について活用されることになります。そういう仕組みが入れられようとしている。もう一つが紛争解決の制度です。今のP4協定にも第15章に紛争解決の制度というのがあります。これは何かというと、加盟国政府が相手国政府を訴える。TPPルールに違反したとき、何とかしなさい、制裁措置として同様の金額を課税しますというルールを作っています。これに違反をした時、どこに訴えるのかというと、それは国連とか公的な機関ではなく、それぞれの国がお金を出し合って作った私的な紛争解決機関に訴えることができる。ここには常駐の裁判官がいるわけではなく、その都度、国際取引経済の専門家が、加盟国、相手国から一人選び当事者国2カ国で議長を選び、この3人で議論をします。ちょっと不思議なのは訴える側と訴えられた側が相談をして議長を決めます。これは決まるわけがありません。その場合、どうするのかということはルールで決まっています。世界銀行の事務局長が決めるということになっています。世界銀行の総裁は歴代アメリカ人はやっていません。国際経済の専門家と先ほど言いましたが、TPPを進めようと言っている人たちが裁判官としてその都度選ばれて議論されますが、そこで適用されるのは日本国憲法でもなく、ルールでもなく、日本の労働条件・労働基準法でもなく、日本の文化でも慣習でもなく、TPPに適合かそうではないかだけ判断する。判断されるとやり直しはきかず、直ちに法的効果を持つことになります。こういう制度になっています。しかも紛争解決の制度はTPPルールに違反した場合だけではなく、一見したところどこもルールには違反はしていないけれども、TPPで保護しようとしている利益を侵害する場合については訴えることができる。こういう規定になっています。だから一生懸命TPPのルールを守っていても、相手国から「利益を侵害している」と訴えられるということもあるということです。こういう仕組みになっております。現行のP4協定はそういう手続きを政府間だけとしてあります。それはかなり政治的な問題ですから、いろいろな要素が含まれています。これをそうではなく、投資家が相手国政府を訴えることができるようにしようというのがISD条項です。収用補償、これは政府に工場を取られたという時。これは分かりやすい話ですが、この条項の中には間接収用というのが入っています。これは何かというと、取られはしないけれども、同じように打撃を与えるなら訴えることができるようにしてくださいということです。これはどんなことかというと、厳しい自治体の環境規制条例があって工場を作ることができなくなったので、その損害賠償をという使い方ができる。これは実例でもあります。北米自由貿易協定の中で、アメリカの企業が訴え損害賠償が認められています。もう一つは「公正衡平原則違反」です。これは、加盟国は投資家を公正、衡平に扱わなければいけない。これに反した場合は損害賠償を訴えることができるという規定ですが、何が衡平で公正な原則なのか。これについての定めはありません。これはその都度、国際間の仲裁官が考えたらいいということになっています。ですから、いったい何が公正・衡平原則違反になるのかが分からない。これについては国際仲裁裁判所に訴えられると日本の裁判所は全く関与することができません。こういったことが紛争解決の効果的なメカニズムとして、新たにTPPに導入されようとしています。これはこの数年間どんどん増えています。年間100件くらい訴えられて2012年の段階で511件提起されています。そのうちの200件近くがアメリカの企業が相手加盟国政府を訴えたものです。日本の政府はこのISD条項は大丈夫だと言っています。なぜか。日本は今までFTA条項を結んできた中で、ISD条項は確か一つだったと思います。ほかの国はたくさんあるけれども、日本は訴えられたことがないので大丈夫です、というのが日本政府の説明です。ISD条項を使って一番訴えているのは一位アメリカ、二位カナダの企業です。日本はアメリカ、カナダとFTAは結んでいません。ニュージーランドと小さい国と結んでいます。紛争になりそうな国々と提携して訴えられていないから大丈夫と言っています。だから、年間200件も訴えているアメリカとFTAを結んでも大丈夫というのが今の日本の立場です。これがTPPをアメリカ政府が持ち、アメリカの企業が持ち、オーストラリアやその他の国々と関係を持った時どうなるのか、こう考えることが必要です。

<安倍内閣がめざしていること>
ついでに安倍内閣がいま目指していることですが、主要五品目は守ると話していますが、それとは別に就任演説で言いましたが、企業が最も活動しやすい国を作る。日本は貿易立国から投資立国になる。投資立国になるという事はどういうことかというと、日本にもいっぱい投資が来るようにする。逆に言えば日本に投資する投資家にとって邪魔になる制度は外していく、ということを宣言しています。安倍のやり方は、国会で正式にいろいろな委員会で議論をするのではなく、自分たちで勝手な私的機関を作りそこで議論をして、その議論を国民に押し付ける、そういうやり方です。いろいろなものができています。国家戦略特別区域法、規制改革会議、労働政策審議会、経済財政諮問会議、日本経済再生本部、産業競争力会議、いろいろな会議を作りそこに有識者と言われる人たちを呼んでいます。この中で労働組合が関係しているのは労働審議会だけです。後はフリードマンの流れをくむ学者たち、竹中平蔵、八代尚宏など新自由主義経済学者たちとか、アサヒビールの社長だとかキャノンの社長といった企業家たちでいろいろな審議会を作って、労働に関していろいろ手をまわしている。こういう流れと国内の動きとTPPが出来上がった時、そこから政財界、政府が外圧としてTPPを利用して規制緩和していくということが十分考えられることです。労働契約法緩和、外国法緩和、労働時間適用を除外、国家戦略特別区域法・戦略特区に解雇特区を作るという話をしています。規制改革会議ではホワイトカラーエグゼンプションの導入で残業が出ないような仕組みを作る。ジョブ型正社員といって、転勤しなくてもいいけれどいつでも解雇できるようにする、外国労働者の活用、派遣法の改正、ジョブ型正社員制度の導入、行き過ぎた雇用維持型・日本は入社して解雇される心配がない、だから企業から企業へ移動できる仕組みを作っていくという労働移動支援型政策転換、解雇の金銭解決制度の検討、整理解雇4要件の見直しということを政策提言として各委員会が出しています。この流れの中で今、TPPができようとしている、ということを押さえていただきたいということです。この戦略会議の中で3〜4つの審議会に顔を出している人物がおります。甘利大臣です。彼はTPPの担当大臣です。3つくらいに竹中平蔵が入っています。そういう人たちが労働規制緩和について議論をし、TPPの推進について議論をしている。国の中の動きと、国の外の動きが交わった時、私たちの生活には何が起こるのか。

<TPPによる労働市場への影響>
 それで、いよいよ労働の話に移りますが、「TPPによる労働市場への影響」農業の問題がやはり大きいです。TPPが完全自由化された時、農業はどうなるのか。内閣府では農業だけで何兆円の損害と言っていました。北海道庁のHPを検索すると、北海道庁の試算では2.1兆円の減額、これは直接農業に従事する人だけではなく、それを運ぶ運輸業者、加工業者なども含めての話ですが、17万人の雇用が失われるというのが計算です。北海道の人口が550万人だそうですが、就労人口が220万人で現在14万人の失業者がいるということですが、ここに17万人の雇用が失われるということです。この道内の経済に与えるインパクトはかなり大きなものがあるだろうと思います。17万人の雇用が失われた時、その雇用はどこに行くのか。新たな成長産業、輸出産業が道内にできない限りその雇用の行き場がないということです。輸出産業とは何か。北海道庁の報告では北海道の輸出国は中国、韓国でTPPは関係がありません。それ以外に輸出拡大ができそうな国はどこか、アメリカが4番目か5番目に入っているそうですが、アメリカに輸出をすることができるのか、何を輸出するのか私は分からないのですが、恐らくそんなに簡単なことではないと思います。なぜかというと、オバマはTPPに参加と言って、一般教書演説の中でTPPとは何か、アメリカが他国に物を売ってアメリカの雇用を確保する、そのためにTPPに入ると言っています。そうするとアメリカが日本の商品をどんどん買うということは恐らくあり得ない。北海道で失われた17万人の雇用が行くだけの、新たな雇用の創出ができるのか。その時に、たとえ仕事を失っていなくても、失業者が巷にあふれ職探しをしているときに賃上げと言えるのかという話です。辞めませんと言えるのか、解雇と言われた時どうするのかという話です。それでも日本政府は、労働者は何も心配することはありません。失業者があふれてもそれはあなたたちには関係がないと、そういう話です。では何に活路を見出したらいいのでしょうか。考えられるものとしては公共事業です。公共事業については善し悪しがあると思いますが、それにしても雇用が失われた時の受け皿になるのは公共事業が考えられるのは当然の話です。調べてみると北海道の公的事業というのは道内経済の32.8%だそうです。全国では21.3%です。これは北海道町村会のHPでの提言です。先ほどちょっと政府調達ということをお話いたしました。これはすべてを海外入札しなければいけません。そこで契約遂行能力があれば、安いもの勝ちということになります。外国企業が入ってくる、その時に、外国企業が投資をするのに邪魔になるようなことをしたらいけません、ということが定められますので、公共事業へ参入してくることになる可能性が十分にあるということです。道内の建設業者で公共事業に関連する業者は、近いというメリットがありますから全部失われるというわけではないのでしょうが、世界を相手に勝負をしなければならなくなる。しかし、働くのは日本人だから雇用は確保されると思うかもしれませんが、先ほどのP4協定の一時入国のところに「サービス貿易従事者の一時入国について邪魔をしたらいけません。一時的入国は許容しなければいけません。」ということが書かれています。政府は単純労働者の入国は議論されていませんと言っています。P4協定でもそれは対象外です。移民、市民権をどういう人たちに与えるのかということについてはその国が決めることです。就労を求めてやってくる人たちを受け入れるのか入れないのか、これについてもその国が決めることです。これを逆に考えてみると、企業が自分の社員を相手国に送るとき、これは一時入国の章が適用されます。アメリカの巨大会社が、ベトナムで安い労働者を社員として雇い、企業内移動で技術者として一時入国の対象になります。一時入国、企業内移動だからそれを邪魔してはいけない。今議論をされたという報告は聞いていませんが、これから先、十分に起こり得ることです。一時入国は知的労働者、技術者、コンピュータ操作者といった特殊な技能を持つ人を対象としていると日本国政府は言っています。今議論されていない人たちについてで、そうではない人たちについて議論されないという保障はどこにもないというのがTPP交渉の中での現状です。現に中国が今こういうことをやっています。中国では今、アメリカからたくさんの公共事業を受けています。安い価格で入札をして、安い労働の中国人を送り込んで、トレーナーハウスのような所に半年から1年住まわせて、工事が終わると引き上げていくというやり方です。こういったやり方をベトナムや他のTPP参加国はやらないという保障はどこにもありません。そうなった時、公共事業で失われた雇用を吸収するということがうまくいくかどうかです。さすがに全部を外国人労働者というわけにはならないと思いますが、賃金の面でもそこと同じ条件の中でのことです。10年後、20年後そうなっていく可能性があるということです。私が投資家だったら、私は外国で派遣会社を作ります。そこでは登録型派遣で安い国の労働者を派遣し、企業内移動だと支社を日本に作ります。現在、建築業での派遣は許可されていませんが、いろいろな分野での活用が考えられると思います。例えば大手スーパーが日本に来ました。日本の商店、小さなスーパーなど、どんどん潰れました。そこに安い外国の労働者を入れてきます。派遣会社はサービス業として保護されます。TPPができたらそういったことが十分に可能になるということです。日本経団連は2007年に、すでに外国人材受け入れ問題に関しての第二次提起というものを出しています。これは、外国人労働者を日本の労働市場に大量に引き入れなければならない。2008年には人口減少化に対応した経済社会の在り方で、日本は少子高齢化で労働力人口が少なくなっているから外国人労働者をたくさん入れて、この中には移民を入れるとも言っています。これで一時入国自由化してほしいという外圧が来てもダメだという交渉ができるのか。そもそもする気があるのかさえ疑問ですが、果たして皆さん方への影響はないのでしょうか。

<自治体による地域振興は許されない?>
 そうは言っても地域の雇用を守るのが自治体の仕事です。地域経済が疲弊して地域の労働者が苦しんでいるのを、どうやって振興させていくのか。地域経済発展させていく、これは自治体の仕事だということで、いろいろな取り組みもしました。地域循環型経済を作ろう、地域の中で雇用を確保し、消費をし、生産をする。そのため自治体が保障するなど様々なネットワークづくりを行うとかやってきましたが、政府調達の章、投資家保護の章の中には「国内企業と外国企業を差別してはいけません」ということが書いてあります。地域経済、地域中小企業を優先するということはTPPに正面から違反します。例えば北海道が優先的に地域住民に発注するということは、TPPに真っ向から反します。例えばこんなことも反します。学校給食に地元産の安心・安全なジャガイモを提供しましょうということを条例で定めたとします。これはTPPルール違反です。これは韓米FTAでソウル市内の小学校に、近郊農家で作った農産物をという条例を作ろうとしたら、これは韓米FTA条項に反する恐れがあるから条例を作ることができなかったという報告を聞いています。北海道では、林業を振興しようと、低中階の公共施設を造ろうとする時には地元の木材を使用したい、これは差別的取扱いになり違反になります。多国籍企業は気づかなければ生き残れることができますが、気づいて攻撃されたら駄目です。これは現に民主党がこういう振興策を作ろうとしましたが、ほかの国から文句が出て出来なかったという話があります。小規模建築への地元木材利用の促進、小学校給食への地元食材の導入、地元企業を活用した住宅建築への補助、エネルギー、風力、地熱を利用しようということも違反です。建築関係の労働組合がよく取り組んでいることですが、公契約条例というのがあります。自治体が発注の時、その企業は労働基準を守っているか、賃金の未払いはないか、労働安全基準を守っていますか、こういったことをきちんとできていない企業はリストから外すという条例を作ったとします。これは安全・安心ということではなく、労働者の生活をきちんと確保することによって地域経済を循環させようという目的があるからですが、これはどうなるのか。契約履行能力以外の条件を付けられません。道路はきちんと造ります。労働者の賃金、条件については企業側が考え、行政、国が口出しすることはルール違反になるわけです。これらについてはおよそTPPルールに違反する可能性が出てくることになります。

<食い荒らされていく自治体事業>
 自治体が経営して、水道業者、保育所、幼稚園、第三セクターなど許されません。外資にとって不利益であれば是正が求められます。自治体が民間委託で保育所をしたとします。そういう場合には、契約を打ち切ることはできませんということを書いていなければ、契約を打ち切ること自体が損害賠償の対象になります。こういった条項が韓米FTA条項に入っています。こうなった場合は打ち切りますと、細部にわたって契約書に書かれていない場合は打ち切ることもできません。こういった状況の中で、我々の働く環境が変質していくというのが今のTPPで議論をされていることです。

<労働法制はどうなっていくのか>
 では労働法制はどうなっていくのか。政府は労働分野には何の影響もないと言っています。日本の労働基準は非常に優れています。これを下げろという議論はありません。ILOの基準は守りましょうということが書かれています。自国の貿易を有利にするために労働の規制緩和はしてはいけない。規制緩和をして労働条件を無茶苦茶にして、安く物を作るのは公平ではないからです。規制緩和を貿易促進に使ってはいけませんというようなことが書かれてあります。これはあくまでもソーシャルダンピングの禁止のためです。貿易促進強化のために労働条件を緩和したらいけないということが書かれています。労働者保護のためにではありません。労働の分野で直接要求されるということはあまりないのかもしれません。しかしこれは労働の章だけを見ていてはだめで、いろいろな章と絡めて労働の規制緩和について考えなければいけないということで参考になるのが、日米投資イニシアチブ報告書です。これは2004年から2009年くらいまでアメリカと日本政府が毎年のように投資の促進に関する協議会というのをやっていました。そこでアメリカは自由化についての報告書を出し、日本は回答をするという往復書簡のようなものを出し合っていました。その中で言われていることが、解雇の金銭解決制度の導入、アメリカは日本の解雇法制は不透明だと言うわけです。不透明な解雇は貿易制限的なので透明化する、それはお金を払って解雇したらきわめて透明だと堂々と言ってきています。これは労働法制の分野とか、労働規制の分野で言っているのではなく、日米投資イニシアチブ、投資機会をいかに拡大するかの協議の中で言われたことです。2番は労働者派遣事業の自由化です。これは毎年言われてきたことです。政府の回答は、ここまでできたけれども、ここからはできていません、もう少し待ってくださいという回答をしてきているわけです。3番はホワイトカラーエグゼンプションの導入で、4番は確定拠出型年金制度の緩和です。これは労働者が企業から企業へ移っていく時に年金をつけて移動させる。これは企業年金、企業内年金でやっていると計算が難しいので、もっと簡単に年金ごと労働者を移動すれば自由に移動ができるので、そういった制度を作りなさいと言っているわけです。これは投資機会の拡大のためのやり取りです。こういう議論が様々な分野の中で出てくるのだろうと思います。派遣法についてですが、これは事業法です。これは派遣事業をするための条件づくりをどうするかという法律で、そこに働く人をどうするかというための法律ではありません。これはサービス貿易の問題です。その中で各国の企業が日本に来るときにどんな条件を守らなければいけないのか。一旦緩和したら、これを規制することはネガティブリストの中に派遣事業について規制するかもしれませんということが書いていなければ規制できません。今ある規制を維持するということだけになります。整理解雇については労働者と企業が対決をする時、大きな武器になります。これが不透明だとアメリカは言っています。そこで金銭解決の章が出てきます。例えばアメリカの巨大企業が日本にできました。膨大な数の労働者を雇いました。やっぱり儲からないので、縮小のため従業員解雇を行ったとします。日本の労働者は裁判を起こします。日本の裁判の要件で勝ちました。判決が出たとします。この場合海外企業は、日本の裁判が投資家の利益を侵害しているということを訴える可能性があります。これは、アメリカとエクアドルで結んだFTAで、アメリカの企業がエクアドルに進出し廃液問題を起こし住民が亡くなって裁判を起こしました。20年間裁判闘争をしてエクアドルの最高裁判所で損害賠償の判定が確定しました。アメリカは、エクアドルはFTAに反しているということで国際裁判所イクシードに訴えて執行停止の命令が出ています。エクアドル政府は今頑張っているそうですが、次にはアメリカ政府とエクアドル政府との戦いになるわけです。それは昨年の話です。実際にそういうことをするかどうかについては別にして、そういう可能性が十分に含まれているということです。そういう手段をアメリカの企業が持つ。日本で裁判に勝ったとしても、国際仲裁に申し立てると逆転したという実例があります。外資企業を舞台に大型労使紛争が起きたとしたら、整理解雇4要件に基づき解雇無効の判決が出たとき、その判決が間違っているという国際仲裁裁判所での争いになる可能性があるということです。さらに、いったん緩和した規制を強化することはできません。派遣法、解雇特区を作り、解雇特区に関しては厚労省は認めませんでしたが、解雇特区とはある一定の地域については解雇できやすいようにしましょうという話です。これがもしできたとしたら何が問題かというと、法律で有効期間を決めていない限りこれをなくすことはできません。以上が労働法制の話です。

<労働者共済はどうなる>
 もう一つ労働者にとって、労働組合にとって重要な問題があります。これは誰も言っていません。ほとんど聞いたことがありません。皆さん方が入っている組合では労働者共済事業を持っているのではないでしょうか。これがTPPルール違反になる可能性があります。労働者共済事業は一種の保険です。金融サービスの章の対象になります。特定の分野の労働者に対し小規模でやっているから特例として税金問題等について緩やかです。建前は、少数特定だから事業ではなく助け合いとしていろいろな優遇を受けることができる。これが公正衡平の原則違反になると私は思っています。同じ分野の保険会社が外国から入ってきて、この労働者共済事業が邪魔だ、差別だ、公正ではない、ということを言われたら維持できるのか。たぶん公正ではないと思います。アメリカには共済事業はありません。これは生協でも同じです。スーパーが衡平ではないということを言い出したら可能性は高いと思います。それで、外資保険会社と同じ扱いになっていく。それで勝負ができるのでしょうか。小規模だったら見逃してくれる可能性はあると思いますが、もし狙われたらそういうことになるということです。先ほどISD条項で訴えられるかもしれないというお話をしましたけれども、実はTPPの問題はそれだけではありません。

<TPPは国内法に優先する>
 公的メカニズムは外国企業から訴えられるというのが怖いから何とかしようということだけではありません。先ほど、外国外圧と国内の動きと呼応して、その外圧を利用した労働法制改悪・規制緩和の方向を打ち出される可能性があるという話をしました。実は、TPPの存在そのものがそれを強度化し制度化します。日本国憲法98条2項「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」国際協調主義と言われるやつです。外国と成立した条約は誠実に守らなくてはいけません、というのが日本国憲法の立場です。ここから、どういったことが出てくるのか。それは、有効に成立した条約というのは直ちに日本国内法としての効力を持ち、日本の既存の法律に優先する。効力は上という効力を持ちます。これは憲法解釈としても同じです。TPPが締結され、国会で承認され天皇が交付しました。そうするとTPPルールに違反する日本の法律は、国際法上それを改正する義務を持つということです。改正しなければ日本国内の裁判所で訴えられる可能性があるということです。現在ある法律条例は、TPPルールに違反していることが法律を改正する理由になるということです。例えば、共済事業は廃止という法案が出てきたら、それに関与している労働組合や労働者は大問題になります。国内政治ではどうにもできないと思います。生協をなくすとか。TPPルールに違反するということになれば国内政治は関係がありません。憲法でそれを守ると言っているのですから。違反しないということが証明できない限り無効です、なんてことを言えることになります。それで、今ある法律がすべてTPPルールの洗礼を受けるということだけではなく、これから作ろうとする法律・条例は、TPPルールに違反するものは制定できないということになります。少なくともそういう状況に自治体は追い込まれていくことになります。こういった効果がTPPルールにはあります。

<秘密交渉でどうなっていくのか>
 私が言っていることは、実際にこういったことが起こるとか、実際にこういうことが計画されている、議論されているということを言っているわけではありません。TPPができたらそういうことになる可能性が十分に残されている。それを阻止する仕組みはTPPルールにはありませんということを言っています。極めて広範な条約で、ネガティブリストと言われて作られている条約で、その中で、今議論されていないと言いますけれども、それは本当なのか、どこまで議論が進んでいるのか、本来はこれこれここが大切だから、自由化の対象にならないようネガティブリストに載せてくださいという働きかけを政府にして、進めていかなければいけません。どんな議論がされているのか分かりません。秘密交渉だからです。この交渉に参加するときに、協議中それを外に漏らしてはいけないという条約に署名してから参加するそうです。交渉中だけではなく、条約が締結されてから4年間は交渉内容については一切公表してはいけないということになっています。なぜそんなルールを作ったのか。TPP担当大臣の甘利さんが昨年の7月26日プライムニュースでこう言っています。「情報がどんどん漏洩していくことによって、利害関係者が周りにいますから、反対だ、賛成だがあって動きが取れなくなるということでしょうね」「政府の中で情報を共有する人間は具体的に決めています。守秘義務をかけてですよ。大臣、副大臣、政務官も情報にアクセスできる人間を決めています。全員じゃないんです。極めて限定しています」国民に知られたら大騒ぎになってTPP締結などできません。だから、知らせないようにしています、というのが回答です。こういう中で、議論されていないから大丈夫です、安心してください、労働分野では何一つ日本が譲与することはありません、皆さん方は何の心配もする必要はありません、と言い切れることは大したものだと思いますが。こういう状況で進んでいるということが問題です。

<私たちはなにをすべきなのか、労働組合に求められていること>
 私はTPPルールの基本になる自由貿易の思想、これについては正直分かりません。ですが、少なくとも、どの道を行くのかを選択するということは国民に委ねなければいけないと思います。それは一度にガラガラポンではなく、分野別の選択肢を国民に残しておくことがとても大事なことなのではないかと、法律家として思います。ところが、TPPは国民が選択するようにしたら自由貿易は進まないから、その選択権を条約で奪い、外から押し付ける、それが幸せだからという思想です。この思想には全然ついていけません。恐らくどこかに自由貿易と保護貿易の間の最適なものがあるのだと思います。それは絶対にこの点ということではなく、日本の文化とか伝統とか生活様式とか、皮膚感覚とか、そういったことで決まっていくものだろうと思います。遺伝子組み換え食品、成長ホルモン入りの牛乳、牛肉、それを食べるか食べないかについては少なくともそこの国民が決めることで、これは嫌だという権利をなぜ奪うのか。こういう力を奪うためにTPPはできている、これは農業の輸入の問題だけではなく、労働者、労働組合のおかれている状況についても大きく問題となる。これがTPPです。日本国憲法が最高法ですから違反だと闘うことはできますが、その結果、国際法上違反だと訴えられる可能性もあるわけです。そういう日本になるということを拙速に、国民的議論を抜きに決めていいのですか。私たちは何をすべきなのか、労働組合に求められていること。これは私の希望というかお願いしたいことです。正直、労働組合のスタンス、この問題については非常に消極的だったと思っています。北海道は非常に先進的だと思います。稀有な例ではないでしょうか。本当に労働組合これでいいのか。労働組合がその気になって頑張るという事はどういう意味を持っているのか。農業関係者と、労働者と、消費者と生産者が言い出すと大きな局面も変えることができるのだろうと思います。全国の労働組合の最先端を走っている連合北海道が反対を旗印として頑張っていただきたいと思っております。私なんかをお呼びになったということはそういう気構えがあるのではないかとひそかに期待しているのですが。北海道へ大阪の弁護士が来るというのは、この問題で明確に反対の立場で話ができる弁護士は全国で数人しかおりません。私は私で頑張りますので、是非、労働者の立場でTPP反対という旗印で道内様々の団体と連携していただきたいと思っております。ということを訴えて私の話は終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

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